名古屋市役所合気道部のお知らせ(55)
こんばんは。暑くなりました。明け方の寒さとの落差がかなり激しいときがありますので風邪を引かないように注意して下さい。
先々週見学の方がお見えになったのですが、残念ながら今のところ稽古に参加がありません。ご縁のものですから。
さて、先日ある暴力事件に巻き込まれた職員の方とお会いしました。頭を何針も縫う大けがでした。彼のように人助けに入って負傷するのは尊い行いです。表彰に値します。というのも、いろいろ考えたら行動を躊躇してしまうのが人間の普通の反応ですから。それは、「武道家」でも同じことです。だから、何も考えなくても瞬時に最適行動ができるように訓練しているのです。
実際に武器を手にした相手と対するときの心得については、過去にも少し書いた記憶がありますが、今回は上の事件に関連して丁寧に書いてみます。
1)観察と直後の対応
まず、相手が武器を携行しているかどうかを見極めることが大切です。武器と言っても、日本の場合には銃器はほぼ無いでしょうから。刃物や鈍器なのです。
基本的にそういうものを所持している場合には一対一の面会をすべきではありません。複数でさえ危険です。「武器を所持している状態での話には応じられない」とはっきり相手に伝えます。相手が応じれば、その武器を一時的に預かることが基本です。応じなければ、「面会できない」と再度厳しく通告します。強要すれば、「警察を呼ぶ」と警告し、実際にそのようにします。しかしながら、こういうことはきちんと手順をマニュアル化し、役割を決め、何度か実地訓練をしなければ実際の場面で機能しません。
さて、そうは言うものの、もし何かの理由で相手が武器を所持したままやむを得ず面会するとしても、複数対応が必要です。最低でも3人は必要で、可能であれば相手の背後に人を配備すべきです。後ろからの方がずっと相手を制しやすいからです。これは、後から武器の所持が分かった場合もいっしょです。
2)対応時の間合い
相手が武器を持っている場合には、上半身+腕の長さ+武器の長さの圏外に身をおかなければなりません。当たらなければケガはしませんから。しかし、普通の窓口ではそのような距離は取れません。相手が武器を手にしたときに素早く遠ざかることができるように心理的、肉体的な準備をすることが必要です。そういう意味で、相談者側の背後が机などで詰まっている配置は好ましいものではありません。それと、相手の前を横方向に逃げる場合、相手の利き腕の外側方向に素早く逃げることが肝要です。
3)逃げるか戦うか
まず原則的な話から入りますが、例えば相手が突然武器を取り出して襲いかかってくるような場合、その攻撃に対して反撃することができることは刑法36条の正当防衛に規定があります。相手が攻撃しようとするとき、咄嗟に相手を制する(攻撃する)ことは構わないです。しかし、過剰防衛の規定もありますので、やり過ぎに注意ということです。
ただ一般的に言えば、よほど好戦的な人以外は武器を持った相手から逃げたいと思うのが普通です。それで良いのです。事務室奥に逃げてください。もし逃げても追ってきたら、即座に複数で取り押さえるしかありません。それこそ日頃の訓練成果を見せるべきです。
なお、こういう状況については、冷静な第三者の記録が後になって重要になります。マニュアルで、記録者を複数指名し、時系列で事件を記録させるようにしてください。また、こういう事情の場合、相談したり、指示を受けなくても、自動的に警察に通報する役目を作っておくことも必要です。現状の様子、事件の起こっている場所、事務所の住所、電話番号、自分の所属、氏名などがよどみなく話せるようにするためには、やはりマニュアルと訓練が必要です。
4)加勢あるいは救援
しかし、たまたま職場の同僚が武器を持っている相手に襲われていることを見たなら、手助けすることは当然です。しかし、実際にはほとんどの場合「見て見ぬ振り」を決め込むでしょう。あるいは、呆然と事態を見過ごすでしょう。リスクは犯したくないのが人情です。だからこそ、最初のほうで紹介した彼の行為は素晴らしいのです。ただし、戦術的には間違っていました。正面から相手に立ち向かってしまったからです。前方から立ち向かうなら、本か何かを顔に投げつける方がベターですが。
結論的に言うなら、同僚の救援は攻撃している相手の死角からした方がずっと効果的で、成功の確率も高いのです。具体的に言えば、例えば後ろから襟か髪の毛を掴んで、後ろに引き倒すなどです。前に気を取られている人間は後ろに注意が行っていませんので、簡単に引き倒されるでしょう。でも、やるのなら、全力でやらないと、あなたが攻撃対象になりますよ。相手が倒れたら、速やかに複数で取り押さえ、武器を取り上げます。後は警察官の到着を待ちます。到着まで手を緩めないことです。
なお、実際に暴力を振るっている相手を民間人が現行犯逮捕できることは刑事訴訟法213条に規定があります。暴行犯を正当に制圧しておくためにも、「現行犯逮捕する」と正確な時刻も添えて宣言しておいた方が良いでしょう。もちろん、この経過も詳細に記録しておくことが重要です。後で必ず必要になります。何なら、スマフォ等で動画撮影しておくことも良いでしょう。ただし、スマフォが証拠物件として一時預かりされてしまうディメリットはありますが。
5)まとめ
武器を持った暴漢への対処をかなり詳細に記述しました。合気道のHPに似つかわしくないとあなたが思っているかも知れませんが、合気道の精神の一つは「身を守る」ことですから、矛盾はありません。さらに、合気道は実際に社会に活かされることも必要だとしています。
最後にひと言です。説明の途中の動作について具体的なことは書きませんでしたが、あなたが必要ならそれは道場の稽古の中で教授します。
ちなみに、負傷した職員の方、合気道に興味をお持ちだと言われましたが、「即席の効果は望めません」と返事をしました。現実は現実として認めた上でないと、付け焼き刃は却って危険ですから。
師範 白井敬二
【6月の稽古予定表】
枇杷島スポーツセンター 第二競技場 午後6時15分〜7時15分
7日、14日、21日(すべて水曜日)
北スポーツセンター 第二競技場 午前10時〜11時30
4日(日)のみ。PC抽選の結果です。
*いずれの会場も稽古1回ごとに300円の会費をお支払いいただきます
枇杷島スポーツセンターでは、個人使用料200円が別途必要です。
【重要】(入会について)
見学、お試し期間を経て、師範から正式に入会を許可され、入会申込書を提出して、正式な部員になります。まずは見学からどうぞ。入会者は基本的に名古屋市役所職員、家族、OB・OGです。
見学希望者は、 師範の白井敬二まで、まずメールでご連絡ください。 質問もOKです。
(メールアドレス)white1000million@gmail.com
その際には、件名を「合気道」とお書きください。所属と、氏名、電話番号も明記してください。なお、時々返信メールが届かない場合あります。私からの返信メールが届くように、必ず、着信拒否の設定を外しておいてください。