以前にも書いたことがありますが、合気道の指導をしていて、上達の鍵を握るのが、指導者側の言語化能力です。つまり、自分の技を弟子たちに再現させる(あるいはそれ以上にする)ためには、彼らに理解されやすい言葉を選び、表現に工夫をこらすことが大切です。極端なことを言えば、弟子一人一人に適合した表現をそれぞれに「調整」する必要があります。それは彼らの運動能力やセンスに加え、嫌悪の感情まで織り込まなければならない作業です。いわゆる「権威者」はほとんどの人たちに自分のやり方に合わせろ、というでしょうが、それはロボットのような画一性を求めるものです。自衛隊の合気道部が稽古に代えて「訓練」という言葉を使っていることが端的な例でしょう。彼らには一糸乱れぬパレードの行進のような技が理想なのです。それは、合気道の演武会を見れば一目瞭然です。
しかし、合気道の開祖と呼ばれる植芝盛平師の稽古では画一性を求めることはなかったのです。これは私の師岩田和也氏(2番目の内弟子)から聞きましたから、間違い無い事実でしょう。しかし、弟子たちは植芝氏が行った手本の技を詳細に記憶し、再現することに心血を注いだとも聞きました。これは一見矛盾しているように思えますが、弟子たちは、植芝師のような効果的(効率的)な技が実現できなかったからこそ、師匠の動きの真似をしたのでしょう。その証左として、初期のころの弟子たちは年月を経て上達するにつれ、それぞれ独自の技のやり方を開発しました。私の師匠も同じです。ですから、2代目の植芝吉祥丸氏が技の統一を目指すまでは技のやり方にバラエティーがあったのです。その理由は山登りの例で言われるように、結果を出すためにはいろいろなやり方があるからです。
私は、今の合気道は植芝師が行っていた技の多くを失っていると考えています。もちろん、技の美しさ、見栄えの良さは認めます。しかし、習得の難しい合気の技術を削ぎ落としてしまっています。その点は私の師匠も同じでした。しかし、彼が教えてくれた技には合気をかけないと実現不可能なものが多く混じっていました。今、岡本貢氏の映像を観るとそれがよく理解できます。合気道に力はいらないという植芝師の言葉に嘘偽りは無いのです。
今回はここまでです。
師範
白井敬二
(参考)
1)北スポーツセンター合気道教室および名古屋市役所合気道部稽古風景 徒手
2)北スポーツセンター合気道教室および名古屋市役所合気道部稽古風景 対武器
3)北スポーツセンター合気道教室および名古屋市役所合気道部稽古風景(3)武器対武器
【4月稽古予定表】
・枇杷島スポーツセンター 水曜日 夜 第2競技場 午後6時00分〜7時00分
30日
・スギ薬局知立市福祉体育館 水曜日 午後 柔道場 午後3時〜4時30分
2日、9日、16日、23日
北スポーツセンター 午前9時〜11時30分 (9時から10時頃までは柳生新陰流居合の指導をします)
・第2競技場
13日
・NASPAスタジオ
6日、20日、27日
*稽古代はどこでも一回1,000円です。入会金はありません。
【重要】(稽古について)
新規稽古生を募集中です。一回だけの稽古でもOKです。合気の本質に立ち戻り、小が大に対抗できるようにしたい、社会に役立つようにしたいので、小柄な女性に護身術をお教えしたいと思います。参加希望者は事前に白井までご連絡ください。以下のアドレスです。